福井特有の環境(地下水などの水資源)や雪などの地域リソースを積極的に活用した研究を行っています。暖地積雪地域における雪の効果的な利活用方法を探るとともに、地中熱を利用した空調システムの高効率化に向けた技術開発を行っています。
また地中熱と太陽光を組み合わせたエネルギーマネジメントに関する研究などを通して、楽しみながら、地域に根差した自然エネルギーの活用を創出します。
ナチュラル・リソース研究部
福井特有の環境(地下水などの水資源)や雪などの地域リソースを積極的に活用した研究を行っています。暖地積雪地域における雪の効果的な利活用方法を探るとともに、地中熱を利用した空調システムの高効率化に向けた技術開発を行っています。
また地中熱と太陽光を組み合わせたエネルギーマネジメントに関する研究などを通して、楽しみながら、地域に根差した自然エネルギーの活用を創出します。
再生可能エネルギー/地中熱利用/ライニング地中熱交換器/
エネルギー杭/地中熱ヒートポンプシステム/
エネルギーマネジメント/ZEB・ZEH/
雪氷熱利用/利雪/
屋外貯雪/雪氷融解解析モデル
NR-1
地中熱は地下深部にある地熱とは異なり、およそ地下200 mより浅い地盤における低温の熱エネルギーであり、特に地下10 m以深の温度は年間を通してほぼ一定である特性を持っています。
この地中熱を利用した空調システムは一般的なエアコンよりも省エネ効果が高く、環境負荷も低いのですが、初期導入コストが高いため、地中熱利用の効率化などによって、ライフサイクルコストを削減することが重要です。
地中熱を利用するためには地下100 m程度までの縦孔に設置する地中熱交換器が必要になります。ナチュラル・リソース研究部では、古くなった上下水道管の中を補修するライニング工法を縦孔に応用したライニング地中熱交換器(福井県内企業との共同研究により開発)を主な対象として、地中熱を効率的に空調に利用する研究開発を行っています。
ライニング地中熱交換器は熱硬化樹脂を染み込ませた袋状のライニング材を地中に挿入し、水圧で膨らませて硬化させて施工します。これまでの研究の結果では、ライニング地中熱交換器は従来の一般的な地中熱交換器と比較して、多くの地中熱を利用できることが分かっています。
更なる地中熱空調システムの普及を目指して、ライニング工法を建物の基礎杭に応用した基礎杭型のライニング地中熱交換器(ライニング式エネルギー杭)も開発しています。
また各ライニング地中熱交換器や地下環境の特性を活かし、運転制御による地中熱利用の効率化や、太陽光発電や蓄電池などと組み合わせた最適なエネルギーマネジメント方法も検討しています。このように、異分野と連携することで省エネ効果の高い技術開発が生み出されることが期待されます。
NR-2
雪の冷熱は食品貯蔵や冷房などに利用され、豪雪地域においては古来より雪室(天然の冷蔵庫)として知られています。雪氷熱は主に積雪寒冷地域で利用されており、雪は断熱倉庫に貯蔵する方法が主流です。しかしながら、その断熱倉庫の費用は高額になることが一般的です。
ナチュラル・リソース研究部では暖地積雪地域における雪利用を促進するために、倉庫を必要としない屋外貯雪に着目して、安価かつ効果的な屋外貯雪方法を検討しています。
屋外貯雪の事例は少なく、必要な貯雪量や被覆材の選定方法などに関する知見は不足しています。また屋外環境下の残雪量は周辺の気象の影響に大きく左右されるため、いつまでに、どのくらいの雪が残るのかを正確に予測することは困難です。
そこで、気象条件や被覆条件から残雪量を予測するための雪氷融解解析モデルを構築し、その予測結果を基に、雪を冷房や食品保存に使った際の費用対効果を検討し、福井県における屋外貯雪の利用促進を図ります。
雪氷1トンを利用することで、石油に換算すると約10リットル分(CO2換算で約30キロ分)が削減できると言われており、雪氷熱エネルギーを積極的に利用することでカーボンニュートラルに貢献することができます。
さらに、夏季の熱中症対策や雪イベントを通して環境教育、さらには雪冷蔵した食品に付加価値をつけたりすることで、地域振興の一助になることも期待されます。“豪雪”と聞くとネガティブなイメージを持っている方が多いかもしれませんが、雪は自然の恵みでもあり、皆が工夫すれば夏でも利用可能な自然エネルギーとして活用することができます。
福井大学 工学系部門
工学領域 建築建設工学講座 講師
寺﨑 寛章
TERASAKI Hiroaki
研究分野水工学
東京スカイツリータウンなどにも導入されている地中熱を使った効率的な空調システムの研究開発に携わっています。本学では従来の地中熱交換器に代わるライニング地中熱交換器を開発し、その社会実装を目指しています。同時に、北近畿豊岡自動車道や中部縦貫自動車道のトンネルの出入り口にも導入されている無散水融雪設備の高度化に関する研究開発も行っています。また福井において雪氷熱の利用が進んでいない現状を踏まえて、福井に適した雪室の有効利用方法や屋外における雪貯蔵方法を、各種実験や数値シミュレーションにより調べています。雪氷熱を使った雪冷蔵や雪冷房を通して、地域の活性化や省エネ化を推進していきます。
関連リンク
福井大学 基盤部門
カーボンニュートラル推進本部 特命助教
鈴木 遥介
SUZUKI Yosuke
研究分野熱工学、土木環境システム、建築設備
再生可能エネルギー熱である地中熱や雪氷熱の有効利用に関わる研究を行っています。地中熱の研究では新工法を掘削孔や建物基礎杭に応用した地中熱空調システムの性能評価や電力システム分野との連携も含めた制御手法の開発を行い、地中熱空調システムのライフサイクルコスト削減や建物の省エネ化を目指しています。雪氷熱の研究では福井県内の豪雪地域を対象とした屋外雪貯蔵実験や残雪量予測モデルを用いたシミュレーションにより、費用対効果の高い雪の貯蔵方法や雪氷熱の利用方法を検討しています。これらの研究を通して、福井発の新技術を創出し、カーボンニュートラル実現の一助となることを目指します。
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